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単に感情的な反対となるのを避けて、ダムに関する技術・法制等の問題点についても、専門の先生方を招き、勉強会を開いたりして考えてきました。 その結果、ダムの必要性の根拠として県が作成した「平成7年度 公共事業河川総合開発 武庫川ダム概略設計他2業務報告書 第2編(平成8年3月発行)」の中で重大な誤りがあることに気がつき、8月に県当局に指摘し、県側もこれを認めました。 上記報告書は全文190ページの技術論文ですが、この中の「第5章 流出解析」で、甲武橋地点における基本高水量を4,800立方メートル/秒と定めています。これだけの水が甲武橋付近を流れると、武庫川の堤防は破壊するからダムは必要、というのが県の主張です。 私たちはこれを検討した結果、計算の過程で使用している河川での水の貯留量、流量、河川の長さ等の関係式が間違っていることを指摘しました。 ちなみに、県の設計どおりの式を使うと、100年に一度の大雨が武庫川の流域に降ったとき、川を流れる水量は耳掻き一杯にも満たない僅かの量になってしまいます。 その他技術論文として2・3の不備な点を指摘し、この「流出解析」の章の全面的な見直しを要求しました。1週間後に県は誤りを認め、その後全文を再チェックして修正したものを受理しました。 県当局が初めてその主張の中に技術的な欠陥があることを認め修正に応じたことは当然とは言え、それなりに評価しますが、果たしてそれで充分なのか? 私たちは1年以上にもわたって、県との折衝の度にダムの必要性について再検討するように申し入れてきましたが、「この計画は長い間検討を積み重ねてきたものだから間違いなどない」という答えが、判で押したように返ってきていました。 報告書は平成8年3月に発行され、私たちが誤りを指摘したときには、すでに2年半が経過していました。 この190ページの報告書には黒い分厚い表紙が付けられ、あるコンサルタント会社の名前と、「兵庫県西宮土木事務所」の名前が金色の文字で堂々と書かれています。この会社は、昭和57年に武庫川の工事計画を作成し、その時に今回と同じ4,800立方メートル/秒の基本高水量を提案しています。それから15年の間に、武庫川流域ではずいぶん色々な変化がありましたが、こうした事情が検討された形跡はまったく感じられません。県の担当者が会社の言い分をそのまま活字にして事足れりとしているのでは、まったくのなれ合いで、その責任を放棄していると言っても過言ではありません。 私たちは間違いを指摘したときに、同時に10カ所近いミスプリントも指摘して訂正を要請しましたが、その中には武庫川の右岸にある支流を左岸にあるとしたり、国土地理院の地図にも記載がなく、地元の人が誰も知らないような川の名が記載されていた事例までありました(指摘した箇所は今回全部見直しがなされ、訂正されていました)。 この事実はダム建設の決定を左右するような重要な文書がいかに杜撰なものであるかをよく物語っています(もし誰も反対しなければ、建設案はこの書類を付けてこのまま建設省まで行き、簡単に認可されていたのではないでしょうか?)。 しかし、問題はこれだけではありません。 県がその非を認めたことは評価するにしても、結論の4,800立方メートル/秒という高水流量の数値には何の考慮も払われていないとしか言いようがありません。 新しく提出された流出解析では、私たちが指摘した式の誤りを含む2ページを除外し、その代わりに「建設省河川砂防規準(案)調査編二訂版(昭和61年8月発行)」の貯留関数法に関する解説と、その中にある利根川の計算例を記載してあります。 実際に武庫川の流域で降った雨の資料を基にして計算した事例は全く記されていません。 「流出解析」の前の章「降雨解析」では、明治32年以来の降雨について多くの検討が加えられているにもかかわらず、いきなり4,800立方メートル/秒という結論だけが書かれています。 ”武庫川流域に何ミリの雨が降ったから、川を流れる水の量がこれだけ増える” 、と言ったような誰でも一番知りたい問題については、計算の過程は全く示されていません。これでは、利根川の例を書いてあるから、その通りに計算すれば武庫川の結果は出てくる、と言わんばかりです。参考書に書いてある通りにすれば、結果はここに書いてある通りになる、というような態度が果たして誠実な技術者の書いた論文と言えるでしょうか? 国の経済状態が非常な困難に直面しているようなこの時期に、このような安易な姿勢で何百億円という巨額な公共投資が、何の疑問の声もなく実施されるようなことは断じて許されるものではないと思います。真の民主的な発言を集約して実行されてこそ「公共投資」の名にふさわしいのではないでしょうか? 私たちはこうした考えに基づいて「武庫川ダム」の建設に反対し、県当局に対してもさらに問題を提起して、白紙撤回が実現するまで努力したいと考えています。 |
| (文責/岡田 隆) |
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